銭形愛「お面でゴメン殺人事件」

この話、改めてみると演出が非常に面白い。美大の演劇科を舞台にした事件ということで、演劇を意識した作りになってます。例えば、如月の取調べのシーン。これはDVDのメイキングでも演出シーンが収録されていますが、如月は誰もいない観客席に向かってあたかも劇の台詞のように受け答えをします。さらに、弥生が誤って逮捕されるシーン。これは、”五代が早とちりで弥生が犯人と断定”→”五代、弥生を探しに行く”→”残された愛の元に弥生がやってきて、自分の衣装のことを告白”→”五代戻ってきて弥生を逮捕”→”一人残った愛、トリック解明の糸口を感じる”という、普通5つに分けるシーンを、3分強もあるカメラ固定の1カットで撮影しています。役者の動きも“五代上手へ退場”→”弥生下手から登場”→“五代上手から再登場”→”五代と弥生上手へ退場”といった感だし、最後に愛がお決まりの台詞”匂う、悪の香”をいうところでは、照明が落ちて愛にスポットライトがあたるという、完全に演劇の舞台の作りになっています。
この回の古厩智之監督は、映画監督ということで映画的なカットもあり、映画監督が舞台を意識して撮ったという視点で見なおすと、別の面白さが出てくる作品に仕上がってると思います。